健康管理システム導入事例集【前編】企業規模別・課題別で見る最適な選び方
はじめに
「自社に合った健康管理システムがわからない」健康管理システムの導入を検討する際、多くの企業がこの悩みを抱えています。従業員50名未満の小規模企業と従業員2,000名の大企業では、抱えている課題も必要なリソースも全く違います。また、2028年のストレスチェック義務化に備えたい企業と、既に健康経営優良法人認定を取得していてもっと質を高めたい企業でも、選ぶべきシステムは変わってきます。
本記事では、実際に健康管理システムやオンライン健康管理室を導入した8社の事例を、企業規模別・課題別に詳しくご紹介します。建設業50名未満の小規模企業から、71事業所・約2,000名の大企業まで、多様な業種・規模の実例を通じて、「自社に最適な導入形態」を見つけるヒントをお伝えします。
この記事の読み方:まず次の「一目でわかるマトリクス表」で自社に近い事例を見つけてから、該当セクションを読み進めることをおすすめします。また、後編の「課題別の選び方」セクションでは、抱えている課題から逆引きで最適な導入形態を探すこともできます。
【一目でわかる】企業規模×課題×導入形態マトリクス
まず、8つの導入事例を一覧表でご紹介します。自社の規模や課題に近い事例を見つけて、詳細セクションをご確認ください。
| 業種 | 従業員数 | 主な課題 | 導入形態 | 導入の決め手 | 主な成果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設業 | 50名未満 | 紙管理と経営者対応の限界 | ① | 専門職に丸ごとお任せ、法令遵守 | 健康優良企業認定取得、従業員健康活動 |
| 卸売業 | 約250名 | 健康経営データ可視化 | ⑤ | システム使いやすさ+健診事後措置 | 健康経営に必要なデータ整備 |
| 製造業 | 約250名 | 健康経営の質向上 | ② | ワンランク上の健康経営 | 月2回訪問で実効性向上 |
| 医療業 | 約150名 | 嘱託産業医訪問日以外の対応 | ③ | 選任産業医と役割分担 | がん両立支援、メンタル対応などの従業員支援 |
| 介護業 | 約150名 | 離職対策、従業員支援 | ③ | 従業員の相談窓口 | 離職率低下、従業員相談支援 |
| 医療・介護 | 約200名 | 経営刷新で健康管理不備露呈 | ② | ゼロからの体制整備を専門職に | 衛生委員会正常化、法令遵守開始 |
| 医療業 | 約500名 | 18施設バラバラ管理 | ① | 複数施設の統一管理 | 復職中心の従業員支援 |
| 建設資材 | 約2,000名 | 71事業所の一元管理 | ⑥ | 段階的導入、既存リソース活用 | 担当者負担軽減、地域の小規模事業所従業員への支援増加 |
注:導入形態の番号について
表中の①〜⑥の番号は、以下の導入形態を示しています
①オンライン健康管理室ウェラボ:産業医・保健師によるオンライン運営
②オンライン健康管理室+嘱託産業医訪問:オンラインと対面のハイブリッド
③オンライン健康管理室+他社産業医連携:選任されている嘱託産業医とオンラインの連携
④システム単体:健康管理システムの単体利用
⑤システム単体+健診事後措置:システム利用に加えて健康診断事後措置サポート
⑥システム単体+地域限定オンライン:システムに加えて必要な地域へのオンライン支援
次のセクションで、各導入形態の詳細を解説します。
導入形態6パターンの違いと選び方
| 導入形態 | 特徴 | 向いている企業 | 費用感 | 主なメリット |
|---|---|---|---|---|
| ① | 産業医・保健師によるオンライン健康管理室 | 産業医・保健師不在、50名未満 | ★ | 専門職に丸ごとお任せ、法令遵守整備 |
| ② | オンライン健康管理室と対面のハイブリッド | 健康経営の質を高めたい企業 | ★★ | 専門性と実効性の両立 |
| ③ | 選任されている嘱託産業医とオンライン健康管理室の連携 | 選任産業医だけでは機能不足 | ★★ | 既存リソースと外部専門性の融合 |
| ④ | 健康管理システムの単体利用 | 人事部門にリソースあり | ★ | コスト抑制 |
| ⑤ | システム利用に加えて健診事後措置サポート | まずは健康診断事後措置を徹底したい | ★ | 人事部門で運用可能 |
| ⑥ | システムに加えて必要な地域へのオンライン支援 | 大規模・複数拠点、既存リソースあり | ★★★ | 本社は既存活用、地方はサポート |
各形態の選び方
①がおすすめの企業
産業医・保健師が不在だが健康管理を充実させたい企業。2028年ストレスチェック義務化に対応するだけではなく成果を出したい中小企業。産業医・保健師によるオンライン運営で、専門職に全て丸ごとお任せしたい企業に向いています。
②がおすすめの企業
既に健康経営に取り組んでおり、ワンランク上の質を目指したい企業。健康管理を手厚くしたいことに加え、産業医選任義務のある企業。オンラインと対面のハイブリッドで、産業医の専門性とオンラインの機動力を両方活用できます。
③がおすすめの企業
選任産業医はいるが、日常の実務サポートが不足している企業。選任されている嘱託産業医とオンラインの連携で、日常の健康サポートをオンラインに任せる役割分担ができます。
④がおすすめの企業
人事部門にリソースがあり、自社で運用できる企業。健康管理システムの単体利用で、健康管理のデジタル化や一元管理、業務効率化をしたい場合に向いています。
⑤がおすすめの企業
健康診断事後措置に課題感が強かったり、別のシステムでストレスチェックは実施している企業。システム利用に加えて健診事後措置サポートが受けられます。
⑥がおすすめの企業
従業員1,000名以上の大規模組織で、本社には既存リソース(嘱託産業医+保健師)があるが、地方事業所にはサポートが必要な企業。システムに加えて必要な地域へのオンライン支援で、段階的導入でリスクを最小化できます。
それでは、実際の導入事例を企業規模別に見ていきましょう。
従業員50名未満の企業導入事例
事例1:A社(建設業・50名未満・①オンライン健康管理室ウェラボ)
企業プロフィール
A社は関東地方の建設業で、従業員数は50名未満の小規模企業です。導入前は産業医・保健師が不在で、健康診断結果を紙ファイルで保管するのみという状況でした。
導入前の課題
A社が抱えていた課題は大きく3つありました。
1. メンタル不調者への対応
これまでメンタルの不調があった従業員には受診を促し、可能な配慮をしてきましたが、何が正解かは見出せず、また都度対応していくことに不安感と負担感を感じていらっしゃいました。
2. 健康情報管理の壁
健康診断結果は紙ファイルで保管していましたが、「個人情報なので会社が関わってはいけない」という誤解があり、全く活用できていませんでした。従業員の健康状態を把握する仕組みがありませんでした。
3. 従業員の健康状態に課題
健康診断結果を分析したところ、喫煙率44%、約6割が肥満、7割が生活習慣病リスクを保有していました。建設業という業種柄、健康管理の重要性は認識していましたが、具体的な対策が取れていませんでした。
導入の経緯
A社は約3ヶ月の検討期間を経て、オンライン健康管理室ウェラボの導入を決定しました。
1. 顔の見える専門職に運用を丸ごと任せられる信頼感
産業医・保健師が不在のA社にとって、「専門職に丸ごとお任せできる」ことが最大の魅力でした。オンラインとはいえ、担当保健師の顔と名前がわかり、いつでも相談できる安心感がありました。
2. 法令遵守が整備される安心感
「法令遵守の体制を整えておきたい」という経営層の意向がありました。ストレスチェック義務化が報道される前の導入事例ではありますが、オンライン健康管理室なら、ストレスチェックの実施者・実務従事者も担当してもらえるため、法令遵守が確実に実施できます。
3. 費用対効果の高さ
50名未満の小規模企業にとって、産業医を新たに選任するコストは大きな負担です。オンライン健康管理室なら、産業医・保健師のサポートを比較的低コストで受けられる点が魅力でした。
導入後の変化
導入から約1年後、A社には以下のような変化が現れました。
変化1:健康優良企業(銀の認定)取得
2024年に健康優良企業の銀の認定を取得し、2025年には健康経営優良法人の申請を予定しています。オンライン健康管理室でも全力でサポートを行い、「紙ファイルのみ」だった状態から、わずか1年で認定取得まで到達できました。
変化2:従業員の健康活動が活発に
特に印象的だったのは、ある従業員が保健師との面談を通じて10kg以上の減量に成功した事例です。この従業員が全社朝礼でプレゼンテーションを行い、「保健師さんのアドバイスでこんなに変わった」と報告したことで、社内の健康意識が高まりました。
変化3:健康管理体制ができた
紙ファイル保管のみだった健康管理が、データ化・可視化され、従業員一人ひとりの健康状態をリアルタイムで把握できるようになりました。また、「個人情報の壁」も専門職が適切に管理することで解決し、人事担当者も安心して健康管理に関われるようになりました。
オンライン健康管理室ウェラボを選んでいただいた理由
A社が①オンライン単体を選んだのは、産業医・保健師が不在で専門知識がゼロからのスタートだったため、全て専門職に任せたかったからです。法令遵守を確実に実施できる体制を整えておきたいという背景もあります。
50名未満の小規模企業にとって、産業医を新たに選任するよりも、オンライン健康管理室で必要十分なサポートを受ける方が、費用対効果が高いと判断されました。
従業員50-300名の企業導入事例
企業規模や既存リソースの有無によって、最適な導入形態が大きく異なります。ここでは5つの事例から、前編では3つをご紹介します。
事例2:B社(卸売業・約250名・⑤システム単体+健診事後措置)
企業プロフィール
B社は卸売業で、従業員数約250名の企業です。本社と支店がありますが、複数拠点というほどの規模ではありません。導入前は嘱託産業医が在籍していましたが、健康経営を推進していきたいという企業のニーズには十分には対応できていない状況でした。人事部門は2名が兼任で担当していました。
導入前の課題
1. 健康経営優良法人認定に必要なデータが足りない
健康経営優良法人認定の取得を目指していたB社ですが、認定に必要なデータが整備されていませんでした。受診率、事後措置完了率、喫煙率、食習慣、運動習慣等の問診データや、実際の血圧や血糖のデータが可視化されていませんでした。
2. 健診事後措置が十分にできていない
健康診断結果はデータで入手しており、法令で必要な医師の意見聴取等はしていましたが、「どう活用すればいいかわからない」という状態でした。事後措置も形骸化しており、要精検者への受診勧奨や産業医面談が不十分でした。
導入の経緯
B社は、システムの使いやすさと健診事後措置サービスがセットになっている点を評価し、⑤システム単体+健診事後措置サービスの導入を決定しました。
1. システムの使いやすさ
人事部門2名で運用できるシンプルな操作性
2. 健診事後措置サービスとのセット
担当者負担を増やすことなく、健診事後措置を充実
3. 既存の嘱託産業医と連携できる柔軟性
嘱託産業医はすでに選任しているため、新たに産業医訪問を追加する必要はない
導入後の変化
変化1:健康経営優良法人に必要なデータが全て見えるように
システム導入で、受診率、事後措置完了率、喫煙率、食習慣、運動習慣等、健康経営の推進や健康経営優良法人認定に必要なデータを全て可視化することができました。申請書類の作成も効率化され、認定取得に向けて大きく前進しています。
変化2:事後措置が漏れなくできるようになった
健診事後措置サービスで、要精検者への受診勧奨や産業医面談が網羅的に実施されるようになりました。対象者には保健師が徹底的に連絡をし、結果の思わしくない方には人事担当者とも連携してご案内をしました。システム化で、「誰に、いつ、何をすべきか」が明確になっただけではなく、担当者負担となる受診勧奨も任せていただけました。
システム+健診事後措置を選んでいただいた理由
B社には嘱託産業医が既に在籍していたため、新たに産業医訪問を追加する必要はありませんでした。まずはデータ整備と健診事後措置を充実させたいという課題感があり、また、人事部門2名で負担を増やすことなく始めたいという意向もあり、⑤の形態が合っていました。
事例3:C社(製造業・約250名・②オンライン健康管理室+嘱託産業医訪問)
企業プロフィール
C社は機械商社で、従業員数約250名の中小企業です。既にブライト500を取得している健康経営優良企業でしたが、もっと足元の健康管理を強化したいという意向がありました。
導入前の課題
1. ワンランク上の健康経営を目指したい
ブライト500を取得しているC社ですが、経営層の目には健康面や勤務状況で心配な従業員が多くいらっしゃいました。健康課題に合わせた支援をしたいという経営層の強い意志があり、認定を取ることが目的ではなく、従業員の健康を本気で守りたいという想いから、もっと質の高い健康管理を目指していました。
2. 生活習慣病リスクを持つ従業員が多い
従業員の約7割が生活習慣病リスクを保有しているという課題がありました。ブライト500を取得していても、実際の従業員の健康状態には改善の余地が大きかったのです。
導入の経緯
C社では、まずはオンライン健康管理室を導入いただき、その後1年後には産業医訪問もご依頼いただく形となりました。②オンライン健康管理室+嘱託産業医訪問というハイブリッド型を選んだのは、産業医の専門性とオンラインの機動力を両方活用したかったからです。
産業医は毎月2つの事業所を交互に訪問し、職場巡視や衛生員会に参加します。対面面談を求める方にも対応しています。一方、オンライン健康管理室の保健師は、訪問のない期間も継続的にフォローし、必要時には産業医面談も設定します。この組み合わせで、専門性と実効性を両立した支援が実現できました。時折保健師もセミナー等でご訪問させていただいています。
導入後の変化
変化1:産業医訪問で実効性が上がった
月1回の産業医訪問で、現場の声を直接聞く機会が増えました。とくに職場巡視では肩こり腰痛の直接的な相談にご対応させていただいたり、安全衛生委員会でオンラインによる健康相談へのご案内も実現しています。
変化2:オンライン健康管理室で日常のサポートが充実
産業医訪問のない期間も、オンライン健康管理室の保健師が継続的にフォローします。必要があれば産業医面談も行われます。「ちょっとした相談」もオンラインで気軽にでき、健康管理の質が向上しただけでなく、担当者の安心感にもつながっています。
オンライン健康管理室+産業医訪問を選んでいただいた理由
C社は既に健康経営に取り組んでおり、ブライト500も取得済みの優良企業でした。そのため、「もっと質を高める」ことが目標でした。産業医の専門性(対面での相談、現場の観察)とオンラインの機動力(いつでも相談できる、継続的なフォロー)を両方活用することで、より高いレベルの健康経営を目指しています。
事例4:F社(医療業・約150名・③オンライン健康管理室+他社産業医連携)
企業プロフィール
F社は医療業で、従業員数約150名の規模です。選任産業医は在籍していましたが、実態はほとんど機能していない状況でした。
導入前の課題
F社が抱えていた課題は大きく4つありました。
1. 選任産業医の訪問日以外の対応が不十分
選任産業医は在籍していましたが、訪問日以外の日常的な実務が全く回っていない状況でした。産業医訪問は月に1回程度で、それ以外の日の健康管理サポートが手薄になっていました。
2. 精密検査の受診率が低い
健康診断で要精密検査と判定された従業員の受診率が非常に低い状態でした。医療従事者がほとんどなので、自己判断で対応されていることが多く、人事担当者が気を遣いながら受診勧奨を行っていましたが、十分なフォローができていませんでした。
3. 事後措置が形だけになっていた
産業医面談が必要な従業員への連絡や、面談後のフォローが形骸化していました。返信率も低く、誰が面談を受けたのか、受けていないのかが把握できていませんでした。
4. 高ストレス者への対応が不十分
ストレスチェックの高ストレス者率が高いにもかかわらず、適切な対応ができていませんでした。産業医面談の申し出も少なく、メンタルヘルス対策が不十分な状況でした。
導入の経緯
F社には選任産業医が在籍していましたが、日常の実務がうまく回っていない状況でした。そこで、③オンライン健康管理室+他社産業医連携という形態を選択しました。
1. 選任産業医と役割分担できる
選任産業医は実地での業務に専念し、日常の実務はオンライン健康管理室が担当
2. オンライン健康管理室が実務を担当
健診事後措置、ストレスチェック、面談調整等の実務を任せられる
導入後の変化
変化1:法令遵守がきちんとできるようになった
健診事後措置やストレスチェックが確実に実施されるようになりました。オンライン健康管理室のサポートで、漏れなく対応できる体制が整いました。
変化2:がん両立支援・メンタル不調などの従業員支援ができるように
年に数回発生する重要なケース(がん治療との両立支援、メンタル不調者の休職・復職支援等)に対して、適切な対応ができるようになりました。オンライン健康管理室の産業医・保健師が実務を担当し、選任産業医は実地での実施が必要な業務を行うという役割分担が機能しています。
変化3:女性特有の健康課題にも対応
医療業という特性上、女性従業員が多いF社では、女性特有の健康課題(腰痛、首・肩こり等)への対応も重要でした。院内のリハビリスタッフとも連携した施策が検討されています。
オンライン健康管理室+他社産業医連携を選んでいただいた理由
F社には選任産業医が在籍していましたが、日常の実務サポートが不足していました。そこで、オンライン健康管理室に実務を任せ、選任産業医は専門的な判断に専念するという役割分担を明確にしました。両者の連携で、実務の効率化と専門性の確保を両立しています。
前編のまとめ
前編では、健康管理システムの6つの導入形態と、それぞれパターンの異なる4社の導入事例をご紹介しました。
前編で紹介した事例:
- 事例1(A社):建設業50名未満、トータルサポートで①オンライン健康管理室
- 事例2(B社):卸売業250名、データ可視化で⑤システム+健診事後措置
- 事例3(C社):製造業250名、ワンランク上の健康経営として②オンライン健康管理室+産業医訪問
- 事例4(F社):医療業150名、選任産業医と役割分担で③オンライン健康管理室+他社産業医連携
後編では、より大規模な企業の事例や、「自社の課題」から逆引きで最適な導入形態を探す方法をご紹介します。
→ 後編はこちら(12/19公開予定)
執筆・監修
WellaboSWP編集チーム
「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。
