産業医がいない会社のストレスチェックは誰がどう実施する?実施者の確保と面接指導の手配を解説
「うちには産業医がいないから、ストレスチェックは難しい」——こう思っている経営者や総務担当者は少なくありません。しかし、産業医がいないことは、ストレスチェックを実施できない理由にはなりません。
50人未満の事業場には産業医の選任義務がなく、それを前提とした実施方法が厚生労働省のマニュアルでも詳しく解説されています。問題は「産業医がいない」こと自体ではなく、「どうすれば実施できるか」を知らないことです。この記事では、実施者をどう確保するか、面接指導はどこに依頼するか、社内の役割分担はどう整理するかを具体的に解説します。
産業医なし企業が直面する3つの課題
50人未満の事業場でストレスチェックを検討すると、ほぼ必ずぶつかる壁が3つあります。
1つ目は、実施者を誰にするかわからないことです。ストレスチェックには「実施者」が必要で、医師・保健師などの有資格者でなければなりません。さらに「人事権を持つ者(社長・人事部長など)は実施事務に関われない」という法律上の制限があるため、社内での対応が困難に感じられます。
2つ目は、高ストレス者が出たとき面接指導を依頼できる医師がいないことです。ストレスチェックの結果、高ストレス者が医師との面接指導を申し出た場合、その面接指導は医師が行わなければなりません。嘱託産業医も顧問医もいない企業にとって、この対応が最もネックになります。
3つ目は、「自分たちだけでは無理」という思い込みです。外部の専門機関を活用することで、産業医がいない企業でも適切にストレスチェックを実施することができます。正しい手順を知ることが突破口になります。
「実施者」とは何か——なれる資格要件
実施者とは、ストレスチェックにおいて調査票の選定・高ストレス者の判定・面接指導対象者の選定・集団分析などを担う専門職です。法律上、医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師のいずれかでなければなりません(厚生労働省マニュアルより)。医師・保健師については研修は要件とされていませんが、歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師については一定の研修修了が必要です。
ここで重要な制限があります。人事権を持つ者——社長・役員・人事部長など——は、実施者にも実施事務従事者にもなれません。これは「従業員が安心して正直に回答できる環境をつくる」ためのものです。
多くの50人未満企業では、上記の資格を持つ人物が社内にいないケースがほとんどです。そのため、外部からの実施者確保が現実的な解決策になります。
3つの実施者確保方法
方法①:ストレスチェック専門業者の「実施者代行サービス」を利用する
民間のストレスチェック専門業者の中には、有資格者が実施者業務を代行する「実施者代行サービス」をオプションとして提供しているところがあります。費用は30,000〜50,000円程度が多く、調査票の実施・集計・分析・通知のフローを一本化できる点が利点です。
このサービスを利用する際は、実施者が「外部の専門家」であることを従業員に事前に周知しておく必要があります。また、実施者の資格要件についても契約前に書面で確認することが重要です。
方法②:オンライン産業保健サービスを利用する
産業医・保健師がオンラインで産業保健業務全般を提供するサービスでは、実施者・実施事務従事者の選任からストレスチェックの全プロセスをまとめて依頼できます。ストレスチェックだけでなく、健診事後措置や長時間労働者対応も一括して対応できるため、健康管理全体の体制を整えたい企業に向いています。月額制が多く、複数の産業保健業務を包括的に委託することでコストパフォーマンスを高められます。
方法③:嘱託産業医・保健師と契約する
50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、嘱託産業医や保健師と個別に顧問契約を結ぶことも可能です。これにより、ストレスチェックの実施者業務だけでなく、日常の健康相談や面接指導にも継続的に対応してもらえる体制を整えられます。費用は訪問頻度・業務内容によって月額数万円〜と幅がありますが、対応可能な医師・保健師の確保には時間がかかる場合があるため、早めに検討を始めることが理想的です。
高ストレス者への面接指導
産業医不在の企業にとって、面接指導の手配は最も実務上の課題になります。
なお、地域産業保健センター(地産保)についてよく誤解がありますが、厚生労働省マニュアルには「地産保では、ストレスチェック自体は実施していません。また、事業者がストレスチェックの実施者を地産保の登録産業医に依頼することもできません」と明記されています。地産保が無料で対応できるのは、あくまでも高ストレス者が申し出た際の「医師による面接指導」です。
つまり面接指導の手配先として地産保を活用することは可能ですが、ストレスチェックそのものの実施は別途、民間の専門業者やオンライン産業保健サービスに委託する必要があります。
面接指導全体のフローを整理しておきましょう。まず実施者(委託先)が高ストレス者を判定し、面接指導の申出を勧奨します。高ストレス者本人から面接指導の申出書が事業者(会社)に届いたら、事業者は面接指導を担当する医師を手配します。医師が面接指導を実施し、その後「就業上の措置に関する意見書」が事業者に提出されます。事業者はこの意見書を参考に、時間外労働の制限など必要な措置を講じます。
面接指導を担当する医師の確保方法としては、地産保への依頼(無料)、委託した専門業者のオプションサービスの利用(費用は業者によって異なります)、オンライン産業保健サービスの産業医に依頼、嘱託産業医への依頼などがあります。面接指導の費用は事業者負担が原則であり、業務時間中に実施する場合は賃金も支払う必要があります。高ストレス者が申し出た際に慌てないよう、対応先を事前に決めておくことが大切です。
実施者と実施事務従事者の役割分担
ストレスチェックでは「実施者」と「実施事務従事者」の役割が明確に分かれています。
実施者(有資格者)が担う業務は、調査票の選定、結果の評価、高ストレス者の判定、個人結果の本人への通知、集団分析の実施など、専門的な判断が必要な業務です。特に重要なのは、個人の結果通知は実施者から本人へ直接行われるものであり、事業者(会社)には原則として個人の結果は通知されないという点です。
実施事務従事者(社内担当者)が担う業務は、調査票の配布・回収、受検勧奨の連絡、未受検者への対応など事務的な業務で、専門資格は必要ありません。ただし、実施事務従事者には守秘義務が課されます。選任時には役割と義務を丁寧に説明し、同意を得ることが必要です。なお、人事権を持つ者は実施事務従事者にもなれない点は、実施者と同様です。
「集団分析まで無理」ということはありません
「ストレスチェックはなんとかできても、集団分析まではとても……」という声を聞くことがあります。これは誤解です。
集団分析は実施者(委託先の有資格者)が担う業務です。外部委託先に実施者代行を依頼していれば、集団分析も委託先が実施します。社内に有資格者がいなくても、集団分析は実施できます。
集団分析では部署・チームごとのストレス状況(仕事の量的負担・コントロール感・上司のサポートなど)が可視化され、職場環境改善の優先課題が特定できます。ストレスチェックを「実施して終わり」にせず、集団分析の結果を職場環境改善に活かすことこそが制度本来の目的です。厚生労働省マニュアルでも集団分析を実施し職場環境改善に活かすことを事業者の努力義務としており、50人未満の事業場でも積極的に取り組む意義があります。
ウェラボのストレスチェックサポートについて
WellaboSWPのオンライン健康管理室「ウェラボ」では、産業医・保健師が実施者・実施事務従事者を担当しており、50人未満の事業場でも対応実績があります。「産業医がいないからストレスチェックができない」という状況を解消するために、以下のサポートを提供しています。
実施から面接指導・集団分析まで一貫した対応
ストレスチェックの開催設定・受検案内・未回答者リマインドから、高ストレス者の面接指導(産業医担当)、集団分析レポートの作成まで、専門職が一貫して対応します。「実施者はいるけど集団分析の解説は別業者」という分断がなく、担当の産業医・保健師が把握したうえでフォローできる体制です。
集団分析は報告会でしっかり解説
レポートを渡して終わりではなく、定期報告会で産業医・保健師が集団分析の内容を解説します。「レポートをもらったが読み方がわからない」「どう活用すればいいかわからない」という状況を防ぎ、職場環境改善のアクションにつなげられます。
ストレスチェックと生産性調査を同時実施できる
ウェラボでは、ストレスチェックと同時にエンゲージメントや生産性に関するアンケートを組み合わせて実施することが可能です。メンタルヘルスの状況と生産性の両面からデータを取得することで、健康経営の施策立案に役立てることができます。
平日毎日対応で相談しやすい体制
専門職が平日毎日対応しているため、準備期間の相談から実施中の問い合わせ、事後のフォローまで柔軟に対応できます。ストレスチェックだけでなく、健康診断事後措置・長時間労働者対応・健康相談・休復職者フォローなど、幅広い健康管理業務にも対応しているため、まずストレスチェックから始めて健康管理体制を段階的に整えていくことも可能です。
まとめ
産業医がいないことは、ストレスチェック実施の障壁にはなりません。実施者の確保方法は専門業者の実施者代行・オンライン産業保健・嘱託契約の3つがあり、自社の規模と予算に合わせて選択できます。
面接指導については地産保を無料で活用できますが、ストレスチェックの実施そのものは地産保には依頼できない点を理解したうえで委託先を選定することが重要です。集団分析も委託先の実施者が行うため、社内に有資格者がいなくても実施できます。
社内担当者(実施事務従事者)は専門資格がなくても務まりますが、人事権を持つ者は担えないこと、守秘義務があることを理解した上で選任が必要です。
2028年の義務化施行に向けて、外部委託先の検討と社内の実施体制の整備を今から進めておくことが、スムーズな対応につながります。
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執筆・監修
WellaboSWP編集チーム
「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。
