令和7年度 過労死等の労災補償状況|精神障害の労災請求4,958件と女性割合52.4%

2026年7月15日、厚生労働省は「令和7年度 過労死等の労災補償状況」を公表しました。脳・心臓疾患と精神障害を合わせた労災請求件数は6,212件で、前年度から1,402件増えました。請求の急増に対し、支給決定件数は1,310件と前年度並みです。

数字の全体像と、業種・性別・出来事別の内訳をまとめました。

「過労死等の労災補償状況」の対象と全体数値

この統計は、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患(過労死を含む)と、仕事による強いストレスが原因の精神障害が対象です。労災保険の請求と、その決定(支給・不支給)の状況をまとめた統計であり、発症者数そのものを示す統計ではありません。

令和7年度の全体数値は次のとおりです。

全体の決定・支給決定には、複数の勤務先の負荷を合算して評価する複数業務要因災害の分(支給決定は脳・心臓疾患7件・精神障害4件)を含みます。請求件数は複数業務要因災害を区別せずに集計されています。以降で示す脳・心臓疾患/精神障害の内訳は業務災害の数値です。

請求件数は脳・心臓疾患、精神障害のいずれも大きく増えた反面、支給決定件数は横ばいでした。請求の1,402件増に対して決定件数の増加は377件で、請求の伸びに比べて決定の伸びは限定的です。

精神障害の労災請求は4,958件で前年度から1,178件の増加

精神障害の請求件数は4,958件で、前年度の3,780件から1,178件増えました。支給決定件数は1,082件(前年度1,056件)で、うち自殺(未遂を含む)は76件(同88件)です。

認定率(決定件数に占める支給決定件数の割合)は28.2%で、前年度の30.2%から2.0ポイント低下しました。決定件数には前年度以前に請求された事案の分も含まれるため、同じ年度の請求件数に対する割合ではありません。請求が急増する中で、認定される割合はやや下がっています。

業種別では、請求・支給決定とも医療・福祉が最多です(請求1,288件・支給決定292件)。中分類では社会保険・社会福祉・介護事業が中心で、対人業務の負荷が数字に表れています。職種別では専門的・技術的職業従事者の支給決定が296件で最多、年齢別では請求・支給決定とも40〜49歳が最多でした。

出来事別の支給決定はパワーハラスメントが最多

精神障害の支給決定を、発病の原因となった出来事別に見た上位は次のとおりです。

最多はパワーハラスメントの222件で、うち自殺が12件、女性が82件です。カスタマーハラスメントは108件から127件へ、セクシュアルハラスメントは105件から127件へ、ともに増えました。この2つは女性の占める割合が突出しており、カスタマーハラスメントは127件中98件、セクシュアルハラスメントは127件中123件が女性です。

ハラスメント関連の3項目を合計すると476件で、支給決定1,082件の4割強を占めます(件数は本記事で合算)。職場のハラスメント対策は、メンタルヘルス対策の中心的な領域です。2026年10月1日にはカスタマーハラスメント対策が全事業主に義務化されます(義務化の内容と準備手順は別の記事で取り上げています)。

女性の請求は2,597件で全体の52.4%と過半

精神障害の請求4,958件のうち、女性は2,597件です。割合にすると52.4%で、女性の請求が過半を占めました。前年度(1,963件)からの増加幅は634件です。支給決定件数でも、1,082件のうち女性が530件でした。

女性の比率の高さは、業種と出来事の構成と関係しています。請求・支給決定とも医療・福祉が最多を占め、出来事別ではカスタマーハラスメントとセクシュアルハラスメントの支給決定の大半が女性です。対人業務の多い職場のハラスメント対策と相談体制は、女性従業員のメンタルヘルス対策として比重が増しています。

脳・心臓疾患は運輸業・自動車運転従事者に集中

脳・心臓疾患の請求件数は1,254件で、前年度の1,030件から224件増えました。支給決定件数は217件(前年度241件)で、こちらは24件の減少です。うち死亡の支給決定は67件で前年度と同数でした。認定率は26.8%で、前年度の30.7%から3.9ポイント低下しています。

業種別では請求・支給決定とも運輸業・郵便業が最多で、中分類では道路貨物運送業(支給決定50件)に集中しています。職種別では自動車運転従事者の支給決定が53件で突出しました。年齢別の支給決定は50〜59歳が最多、次いで60歳以上です。

支給決定217件のうち、時間外労働時間で評価された事案は186件です。発症前2〜6か月平均で評価されたものは「60時間以上80時間未満」が48件で最多、「45時間未満」は0件でした。発症前1か月の評価では「100時間以上120時間未満」の27件が最多です。残る31件は、短期間の過重業務や異常な出来事によって認定された事案です。認定基準は、時間外労働が月45時間を超えて長くなるほど業務と発症の関連性が強まると整理しており、この分布はそれを反映しています。

労災請求に至る前の社内対応

この統計で増えているのは、従業員やその家族が労災保険の請求という手続きに踏み出した件数です。請求の前段階には、不調の兆候、休業、離職といった経過があります。社内の対応の焦点は、その前段階でどれだけ拾えるかです。

メンタルヘルス面では、出来事別の内訳がそのまま対策の優先順位になります。パワーハラスメント・カスタマーハラスメント・セクシュアルハラスメントの3項目が支給決定の上位を占める以上、相談窓口の実効性と、相談後の対応フローの整備が起点です。ストレスチェックの集団分析では、量的負担や上司の支援といった尺度を部署別に比較でき、負荷の偏りを個別の相談が出る前に把握できます。

過重労働面では、月45時間を超える時間外労働の管理が焦点です。認定事案の時間外労働の分布は、認定基準が過重負荷の目安として置く水準と対応しています。認定基準では、月45時間超で業務との関連性が徐々に強まり、1か月100時間・2〜6か月平均80時間で関連性が強いとされています。労働時間の客観的な把握と、長時間労働者への医師による面接指導が実際に機能しているかが点検の対象です。

医療・福祉や運輸業では、業種特有の負荷(対人ケアの感情負担、長距離運転と不規則勤務)が数字に表れています。全社一律の対策に加えて、負荷の高い職種・部署を特定した重点対応が現実的な進め方です。

執筆・監修
WellaboSWP編集チーム

「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。

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公開日:2026/08/14