職場のいじめ・嫌がらせ相談が14年連続最多に|令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況

2026年7月7日、厚生労働省は「令和7年度 個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。職場のいじめ・嫌がらせに関する相談は55,614件で、具体的な相談内容としては14年連続の最多です。総合労働相談の件数は119万8,010件と、18年連続で100万件を超えました。

統計の全体像と、数字を読む際の注意点をまとめました。

出典:厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」(2026年7月7日公表)

個別労働紛争解決制度とは

個別労働紛争解決制度は、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、労働者と事業主の間のトラブルを裁判によらず解決するための行政サービスです。無料で利用でき、次の三層で構成されています。

第一の窓口が、全国の労働局・労働基準監督署などに設置された総合労働相談コーナーです(全国378か所、令和8年4月時点)。ここで解決しない民事上の紛争については、都道府県労働局長による助言・指導、さらに紛争調整委員会によるあっせんへと進む仕組みです。

労働者が費用をかけずに利用できるため、社内で解決しなかった不満や紛争が最初に表面化する場所とも位置づけられます。

総合労働相談は119万8,010件で高止まり

令和7年度の総合労働相談件数は119万8,010件でした。前年度から0.3%の微減ですが、18年連続で100万件を超えており、厚生労働省は「高止まり」と表現しています。「相談が年々増えている」わけではない点は、正確な区別が必要です。

内訳は次のとおりです。

総数は横ばいでも、単なる法制度の問い合わせは減りました。労働基準法等の違反の疑いがあるもの(10.4%増)と、民事上の個別労働関係紛争の相談(3.5%増)は増えています。相談の中身は、一般的な質問から具体的なトラブルへ移っています。

ハラスメント相談の実態:最多は「いじめ・嫌がらせ」55,614件

民事上の個別労働関係紛争の相談を内容別に見たものが次の表です。1件の相談に複数の内容が含まれる場合があるため、集計は延べ件数(327,359件)です。

分類上は「その他の労働条件」(59,647件)の件数が上回ります。ただしこれは残余カテゴリのため、厚生労働省は具体的な相談内容の最多をいじめ・嫌がらせと整理しています。これで14年連続の最多です。

推移を見るときの注意点:令和4年度に集計対象が変わった

いじめ・嫌がらせの相談件数は、次のように推移しています。

令和3年度をピークに件数が大きく減っているように見えますが、これを「職場のいじめ・嫌がらせが改善した」と読むのは誤りです。2022年4月、パワーハラスメント防止措置(改正労働施策総合推進法)が中小企業を含めて全面施行されました。同法のパワーハラスメントに該当する相談は、この統計から切り離され、都道府県労働局の別統計に集計されるようになりました。令和4年度以降の減少は、この集計対象の変更が主な理由です。

したがって、令和3年度以前と令和4年度以降の数字は単純に比較できません。パワハラに該当する相談を別枠に移した後もなお、いじめ・嫌がらせの相談だけで年間5万件を超えており、令和7年度は前年度から増加に転じています。

助言・指導は8.5%増、あっせんは16.0%増

相談から先の手続きに進んだ件数は、いずれも明確に増えています。

都道府県労働局長による助言・指導の申出は9,616件で、前年度比8.5%の増加でした。内容別では労働条件の引き下げ(1,220件)に次いで、いじめ・嫌がらせが1,163件。いじめ・嫌がらせは前年度比21.1%増と、伸び率が突出しています。処理の98.4%が1か月以内に完了しており、迅速さもこの制度の特徴です。

紛争調整委員会によるあっせんの申請受理は4,486件で、前年度比16.0%の増加でした。処理された4,220件のうち、合意が成立したのは1,141件です。処理件数に対する合意成立の割合を計算すると約27%で、約67%は打ち切りとなっています。

総合労働相談の総数が横ばいの中で、助言・指導とあっせんだけが2桁前後の伸びを示しています。相談にとどまらず、行政の手続きを使って解決を求める労働者が増えている状況です。

相談が労働局へ向かう前に社内でできること

この統計に載っている相談は、従業員が社外の窓口に持ち込んだものです。労働局に相談する従業員は、社内に相談先がない、または相談しても対応されないと感じていたと考えられます。件数の水準は、社内の相談体制が機能しているかを映す数字でもあります。

点検の起点は社内相談窓口の実効性です。パワハラ防止法により相談窓口の設置は義務化済みですが、窓口が形だけになっていれば、相談は労働局へ流れます。相談したことで不利益を受けない仕組みと、相談後に何が起きるかの説明が、利用のしやすさを左右します。

職場単位のリスク把握も点検の対象です。いじめ・嫌がらせは個人間の問題として現れますが、背景には職場の人間関係や業務負荷の偏りがあるケースが少なくありません。ストレスチェックの集団分析を使うと、対人関係のストレスが高い部署を数字で特定でき、相談として表面化する前の対応が可能です。

2026年10月1日には、改正労働施策総合推進法によりカスタマーハラスメント対策が全事業主に義務化されます。社内のハラスメントに加えて、顧客や取引先からのハラスメントへの対応体制も必要になります(義務化の内容と準備は、別の記事で取り上げます)。

令和7年度の統計で変化が表れたのは、相談の総数ではなく、助言・指導やあっせんといった手続きに進む件数でした。相談が社外の手続きへ進む前に、社内で受け止められているか。この統計は、自社の体制を点検する材料になると考えられます。

執筆・監修
WellaboSWP編集チーム

「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。

前の記事
SPQ(東大1項目版)とは|設問・計算方法などを解説

SPQ(東大1項目版)は、1問でプレゼンティーズムを測定できる尺度です。設問文とスコアの計算方法、ライセンスフリーの使用条件、健康経営度調査での扱い、WHO-HPQ・QQメソッドとの使い分けを解説します。Excelでの集計手順や実施時の注意点もまとめました。

詳しくはこちら

公開日:2026/07/10

次の記事
【速報】令和8年度健康経営度調査(大規模法人部門)の変更点|ホワイト500要件の再編と睡眠設問の新設

2026年7月14日の第6回健康経営推進検討会で公表された令和8年度健康経営度調査票の素案に基づき、大規模法人部門の変更点を説明します。必須要件の該当設問変更、長時間労働対策の適合基準の見直し、睡眠設問の新設、ホワイト500要件の再編と、申請前に確認したい変更が続きます。

詳しくはこちら

公開日:2026/07/24