令和7年度 長時間労働の監督指導結果|時間外労働と過重労働の面接指導で企業が整える健康管理

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厚生労働省は2026年9月15日、「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」を公表しました。2025年4月から2026年3月までに労働基準監督署(労基署)が監督指導を行った29,150事業場のうち、11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働が見つかっています。過重労働による健康障害を防ぐ措置が未実施だった事業場も5,919(20.3%)ありました。

指導内容の内訳を見ると、労基署が確認している項目が分かります。本文では、是正指導の事例、医師による面接指導の要件と手続き、面接指導の実施状況、企業が健康管理として整える対応をあわせて説明します。

出典:厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」(2026年9月15日公表、2026年9月25日取得)

令和7年度の監督指導結果の概要

監督指導の対象は、各種情報から時間外・休日労働が1か月80時間を超えていると考えられる事業場と、過労死等に関する労災請求が行われた事業場です。令和7年度は29,150事業場に立ち入り、何らかの労働基準関係法令の違反があった事業場は22,882(78.5%)でした。

違法な時間外労働があった事業場は11,228で、全体の38.5%です。このうち、時間外・休日労働が最も長い労働者の時間数が1か月80時間を超えていた事業場は4,991(違法な時間外労働があった事業場の44.5%)、100時間超は2,842(25.3%)、150時間超は554(4.9%)、200時間超は111(1.0%)でした。割合の分母はいずれも11,228事業場です。

賃金不払残業があった事業場は1,901(6.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施だった事業場は5,919(20.3%)です。前年度(令和6年度)は監督指導26,512事業場、違法な時間外労働11,230(42.4%)、80時間超5,464、健康障害防止措置の未実施5,691(21.5%)でした。監督件数は増え、違法な時間外労働の割合は3.9ポイント下がっています。

事業場の規模別では、10〜29人の事業場が12,234で全体の42.0%を占めます。業種別では商業6,398、製造業4,567、保健衛生業3,810、接客娯楽業3,116の順です(その他の事業3,316を除く)。

労基署が指導した内容の内訳

公表資料には、法令違反の是正勧告とは別に、労基署が指導した内容の内訳が載っています。

過重労働による健康障害防止のための指導を受けた事業場は12,811(43.9%)です。内訳は、時間外・休日労働を1か月80時間以内に削減するよう指導したものが6,717、1か月45時間以内への削減が5,990、面接指導等の実施が2,167、長時間労働による健康障害防止対策の調査審議が1,509、面接指導等を実施できる仕組みの整備が575、ストレスチェック制度を含むメンタルヘルス対策の調査審議が491でした。1つの事業場で複数の指導があった場合は重複して数えられていますが、80時間以内への削減と45時間以内への削減は重複していません。

健康障害防止措置の「未実施」5,919事業場には、衛生委員会の未設置(労働安全衛生法第18条)と健康診断の未実施(第66条)が含まれます。80時間を超えた労働者から申出があったのに面接指導をしていない(第66条の8)、客観的な方法で労働時間の状況を把握していない(第66条の8の3)という違反も数えられています。

労働時間の把握が不適正だとして指導を受けた事業場は4,045(13.9%)でした。内訳は、始業・終業時刻の確認と記録に関する指導が2,620、自己申告と実態の乖離に関する実態調査の実施が1,465、自己申告制の説明が135、適正な申告を妨げる要因の排除が116です。労働時間の管理方法は、タイムカードが10,498、自己申告制が6,517、ICカード・IDカードが6,237、使用者による現認が2,201、PCの使用時間の記録が1,071でした。

なお、1か月45時間以内への削減を求める指導は、2026年9月1日から見直されています。労基署は時間数だけに着目した一律の削減指導をやめ、36協定で定めた健康福祉確保措置の実施状況を重点的に確認する運用に変わりました。令和7年度の指導件数は、見直し前の運用によるものです。

是正指導の事例

公表資料には是正指導の事例が3件掲載されています。3件とも、労働時間が適正に把握されていなかったことが問題になりました。休憩中の労働の未把握、入退室記録を後から修正できる勤怠システム、自己申告とPC記録のずれです。

1件目は労働者約20名の建設業(電気設備工事)です。現場労働者7人が36協定の特別条項(1か月99時間)と法定の上限を超えて働いており、最長は1か月237時間でした。休憩時間中の労働も一部把握されていませんでした。労基署は労働基準法第32条と第36条第6項の違反で是正勧告を行い、80時間以内にする具体策の検討と労働時間の適正な把握を指導しました。事業場は14人を増員し、スマートフォンで打刻できる仕組みと労務管理責任者の現場常駐を導入して、3か月後に違反が解消しています。

2件目は労働者約400名のソフトウェア業です。プロジェクトリーダーが脳出血で死亡し、労災請求があったことから立入調査が行われました。36協定の上限(1か月80時間)と法定の上限を超え、最長は1か月125時間でした。休日出勤の過小申告もありました。勤怠システムは入退室時間を後から修正できる仕様だったため、事業場はこれを改修し、承認フローの簡素化も実施しました。

3件目は労働者約130人の河川管理業務です。自己申告による始業・終業の記録とPCの使用記録が1時間以上ずれる日が複数あり、休日や年次有給休暇の扱いになっている日にもPCの使用がありました。労基署が遡って実態調査をさせたところ、最長は1か月199時間で、36協定の上限は1か月91時間でした。割増賃金の未払いも見つかり、不足額の遡及払いを勧告されています。事業場は、管理者がPCログを確認して翌朝のミーティングで個別に照合する運用に変えました。

事例3では、PCの使用記録と自己申告の突き合わせが違反の発見につながっています。

長時間労働と健康障害の関係

脳・心臓疾患の労災認定基準(2021年9月14日 基発0914第1号、2023年10月18日改正)は、労働時間と発症の関係を次のように評価します。発症前1〜6か月間に1か月おおむね45時間を超える時間外労働がなければ、業務と発症の関連性は弱いとされます。おおむね45時間を超えて長くなるほど関連性は徐々に強まります。発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2〜6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働があれば、関連性は強いと評価されます。ここでの時間外労働は、1週40時間を超えて労働した時間です。

認定基準では、労働時間以外の負荷要因も評価の対象です。拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務、交替制勤務や深夜勤務、出張の多い業務、心理的負荷や身体的負荷を伴う業務、作業環境が挙げられています。80時間に近い時間外労働にこれらの負荷が加わった場合は、関連性が強いと評価される場合があります。

メンタルヘルスへの影響を客観的な労働時間で調べた国内の研究もあります。労働安全衛生総合研究所の研究グループは、国内5社の労働者15,143人を分析しました(Occupational and Environmental Medicine 2023年80巻6号)。6か月分の勤怠記録による労働時間と、その後のストレス反応の関連を調べた研究です。1か月の総労働時間が140〜180時間の群と比べ、月平均180時間以上(週45時間以上に相当)の群ではイライラ感・不安感・抑うつ感が有意に高く、月205時間以上の群では疲労感が高く活気が低い結果でした。この180時間や205時間は時間外労働ではなく、所定労働時間を含む総労働時間です。

長時間労働者への医師による面接指導の要件と手続き

長時間労働者への医師による面接指導は、労働安全衛生法第66条の8に定められています。対象は、休憩時間を除き1週40時間を超えて労働した時間が1か月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者です(労働安全衛生規則第52条の2)。面接指導は労働者本人の申出により行います(同第52条の3)。この80時間は1週40時間を超えた時間で計算するため、36協定で管理する時間外・休日労働の時間数とは計算方法が異なります。

事業者には、面接指導の前後に行う手続きがあります。時間の算定は毎月1回以上、期日を決めて行います。算定の結果80時間を超えた労働者には、その時間に関する情報を速やかに通知します(同第52条の2第3項)。あわせて、80時間を超えた労働者の氏名と超えた時間を産業医に提供します(同第14条の2)。産業医は、面接指導の申出を労働者に勧奨できます。

面接指導の後は、結果の記録を作成して5年間保存し(第66条の8第3項、労働安全衛生規則第52条の6)、医師から意見を聴きます。必要があれば、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少といった就業上の措置を講じます(第66条の8第4項・第5項)。医師の意見は衛生委員会などに報告します。研究開発業務の従事者と高度プロフェッショナル制度の対象者は、1か月100時間を超えた時点で申出がなくても面接指導の対象です(第66条の8の2、第66条の8の4)。

法令の義務に加え、努力義務と行政指針があります。第66条の9は、義務の対象外でも健康への配慮が必要な労働者に面接指導等を行う努力義務を定めています。厚生労働省の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(2020年4月改正)は、申出がない80時間超の労働者にも面接指導を実施するよう努めるとしています。45時間を超えて健康への配慮が必要と認めた労働者にも、面接指導等の措置を講じることが望ましいとしています。

長時間労働者の面接指導の実施状況

制度はありますが、実際に面接指導を受けた労働者は多くありません。厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」(2026年8月7日公表)によると、2024年11月から2025年10月までの1年間に、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった労働者は1.4%でした。そのうち、該当した全ての月で医師の面接指導を受けた労働者は16.2%、一部の月だけ受けたのは7.1%で、一度も受けなかった労働者が76.7%を占めます。前年は一度も受けなかった割合が79.5%でしたので、改善はわずかです。

面接指導は本人の申出を前提とする制度のため、申出がなければ面接に至りません。80時間を超えた本人への通知、申出方法の案内、産業医からの勧奨が運用として定着していない事業場では、対象者がいても面接指導が行われない状態が続くと考えられます。監督指導結果で面接指導等の実施を指導された事業場が2,167、面接指導を実施できる仕組みの整備を指導された事業場が575あったことは、この実態と符合します。

健康管理として企業が整える対応

いずれも新しい制度対応ではなく、既存の法令上の手続きを月次の業務として回す内容です。

労働時間の客観的な把握と記録の修正ルール

労働安全衛生法第66条の8の3は、タイムカードやPCの使用時間の記録など客観的な方法で労働時間の状況を把握することを事業者に義務付けています。自己申告制を採る場合も、PCログや入退室記録と定期的に突き合わせ、ずれがあれば実態調査を行います。勤怠記録を後から修正できる仕組みでは、修正の理由と承認者を残す設定にします。是正指導の事例2・3でも、記録の修正や自己申告と客観記録のずれが問題になりました。

80時間超の本人通知と産業医への情報提供

毎月の算定期日を決め、80時間を超えた労働者への通知と同時に面接指導の申出方法を案内します。産業医には氏名と時間を提供し、産業医から申出を勧奨してもらいます。通知と勧奨をセットで行うことが、申出率を上げる最初の対応です。

法定基準より手前の社内面談基準

労災認定基準は、月45時間を超えて長くなるほど業務と発症の関連性が徐々に強まると評価しています。45時間を超える月が続く労働者や60時間を超えた労働者に、保健師による面談や疲労蓄積度の自己診断チェックリストを行う基準を設けると、申出を待たずに状況を把握できます。健康経営度調査でも、法令を超える基準による医師の面接・指導は評価の対象です。

健診結果と労働時間の突き合わせ

血圧・血糖・脂質に所見のある労働者が長時間労働をしている場合は、脳・心臓疾患のリスクが重なります。健診の事後措置で要治療や要精密検査と判定された労働者が80時間に近い時間外労働をしていれば、面接指導や就業上の措置の優先度を上げます。労働時間と健診結果を月次で突き合わせる手順を決めておくと、優先対象者をすぐに抽出できます。

面接指導から就業上の措置までの記録

医師の意見を受けて労働時間の短縮や業務の調整を決めたら、措置の内容と期限を上長に伝え、翌月の労働時間で効果を確かめます。面接指導の記録は5年間の保存義務があり、労基署の立入調査でも確認されます。

36協定の健康福祉確保措置の実施記録

2026年9月1日からの監督指導の見直しで、労基署は36協定の特別条項に定めた健康福祉確保措置が実際に講じられているかを重点的に確認します。労働基準法施行規則第17条第2項は、措置の実施状況の記録を協定の有効期間中と満了後5年間(当分の間は3年間)保存することを定めています。措置として勤務間インターバル制度を選ぶ企業もあります。厚生労働省「令和7年 就労条件総合調査」によると導入企業は6.9%で、過労死等防止対策大綱が掲げる2028年までに15%以上という目標には届いていません。

衛生委員会での月次の報告と調査審議

これらの状況は、衛生委員会で毎月報告し調査審議します。監督指導結果でも、長時間労働による健康障害防止対策の調査審議を指導された事業場が1,509ありました。報告する項目は、80時間を超えた労働者数、面接指導の実施数、就業上の措置の件数、健康福祉確保措置の実施状況で足ります。

健康経営度調査での長時間労働対策の扱い

健康経営優良法人2027の認定に使われる令和8年度健康経営度調査(大規模法人部門)では、長時間労働対策の設問が「長時間労働の予防と事後対応」(Q57)に再構成されました。a.労働時間の適正化とb.一定の基準を超えた長時間労働者への対応の双方に取り組んでいることが、評価項目に適合する条件です。bの選択肢には「法令を超える基準による、本人に対する医師(産業医を含む)の面接・指導」があり、労働時間を条件とせず本人の申出のみで行う面接は対象外と注記されています。

aの選択肢には、PCのログイン記録等で入退社時刻を正確に記録するシステムの導入と申告時間との差の是正、勤務時間をモニタリングして一定基準を超えた場合にアラートを通知する仕組み、勤務間インターバル制度などが並びます。監督指導で労基署が確認する内容と重なる項目が多く、法令対応と健康経営の評価を同じ運用で満たせます。中小規模法人部門(Q27)は令和8年度の申請ではaとbのいずれか一方で適合しますが、次年度以降は双方の実施をもって適合とする予定と明記されています。

11月の過重労働解消キャンペーンまでに確認する事項

厚生労働省は今回の公表で、11月の過重労働解消キャンペーン期間中に重点的な監督指導を行うと明記しました。令和7年は11月1日から30日までが期間で、長時間労働が行われていると考えられる事業場への重点監督が行われています。令和8年の実施内容は9月25日時点で未発表です。

重点監督では、労働時間の把握方法、面接指導と就業上の措置の記録、36協定の健康福祉確保措置の実施記録が確認の対象になります。

出典

厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和7年度の監督指導結果」(2026年9月15日公表、2026年9月25日取得)

厚生労働省「時間外労働等に係る相談・支援及び監督指導を見直します」(2026年8月19日公表、2026年9月25日取得)

厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」(2026年8月7日公表、2026年9月25日取得)

厚生労働省「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」(2021年9月14日 基発0914第1号、2023年10月18日改正、2026年9月25日取得)

厚生労働省「過重労働による健康障害防止のための総合対策」(2020年4月1日改正 基発0401第11号・雇均発0401第4号、2026年9月25日取得)

厚生労働省「令和7年 就労条件総合調査 結果の概況」(2026年9月25日取得)

過労死等防止対策大綱(2024年8月2日閣議決定、2026年9月25日取得)

Ochiai Y, et al. Characteristics of long working hours and subsequent psychological and physical responses: JNIOSH cohort study. Occup Environ Med. 2023;80(6):304-311.(2026年9月25日取得)

労働安全衛生法、労働安全衛生規則、労働基準法施行規則(e-Gov法令検索、2026年9月25日取得)

ACTION!健康経営「令和8年度健康経営度調査票(サンプル)」「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定申請書(サンプル)」(2026年8月17日公表、2026年9月25日取得)

執筆・監修
WellaboSWP編集チーム

「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。

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公開日:2026/10/02