従業員の睡眠・喫煙率・朝食欠食の年代別傾向|健保連の特定健診問診調査と健康経営施策の立て方
健康保険組合連合会(健保連)は2026年9月、「令和6年度 特定健診の『問診回答』に関する調査」を公開しました。472の健康保険組合、377万人の特定健診受診者が答えた問診22項目を、男女別・5歳階級別に集計した資料です。40〜74歳の健保組合加入者の生活習慣が、年代ごとに分かります。
睡眠で休養がとれていない人は55〜59歳、朝食を抜く人は40〜44歳、喫煙者は男性では45〜49歳に最も多く、課題のピークは年代によって違います。年代別・男女別の値は、自社の従業員の問診結果と比べる物差しとして使えます。施策の立て方と、健康経営優良法人の認定要件との関係も説明します。
出典:健康保険組合連合会「令和6年度 特定健診の『問診回答』に関する調査」(2026年9月3日公開、2026年9月25日取得)
調査の概要
調査の対象は、令和6年度に特定健診を受けた健保組合の加入者3,770,844人(男性2,264,828人、女性1,506,016人)で、472組合のデータを集計しています。特定健診の対象は40歳から74歳のため、年代は40〜44歳から70〜74歳までの5歳階級です。
集計した問診項目は22項目で、服薬の状況、既往歴、喫煙、20歳時からの体重の変化、運動習慣、歩く速さ、食べる速さ、朝食の欠食、間食、飲酒の頻度と量、睡眠による休養、生活習慣の改善意欲、特定保健指導の受診歴が含まれます。健診の測定値ではなく本人の回答を集計したものです。
問診項目別の結果
睡眠で休養が十分とれていると答えた人は、男性62.9%、女性58.7%でした。とれていない人の割合は男女とも55〜59歳が最も高く、男性39.2%、女性44.3%です。女性は50代後半で5人に2人以上が休養不足を感じています。
習慣的に喫煙している人は男性31.2%、女性10.2%です。男性は45〜49歳の34.0%が最も高く、女性は50〜54歳の11.4%が最も高くなっています。
20歳のときから体重が10kg以上増えた人は、男性50.5%、女性30.9%でした。男女とも50〜54歳が最も高く、男性52.3%、女性33.1%です。男性は40〜64歳の各年代で5割前後(48.3〜52.3%)が該当します。
朝食を週3回以上抜く人は男性24.4%、女性16.3%で、男女とも40〜44歳が最も高く、男性32.2%、女性20.4%でした。40代前半の男性は3人に1人が朝食を抜いています。間食を毎日とる人は男性13.1%、女性32.8%で、こちらは女性に多い項目です。
毎日飲酒する人は男性23.6%、女性10.5%でした。男性は70〜74歳の31.9%が最も高く、年代が上がるほど増えます。女性は50〜54歳の11.5%が最も高く、男性とは山の位置が違います。運動習慣がある人(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続)は男性29.6%、女性21.1%にとどまります。
降圧薬を使っている人は男性21.8%、女性11.8%です。特定保健指導を受けたことがある人は男性30.6%、女性13.0%で、男性は55〜59歳の36.9%、女性は70〜74歳の18.5%が最も高くなっています。女性は受診歴のある人が男性の半分以下で、対象になっても受けていない人が多いことがうかがえます。
年代別・男女別に見た生活習慣の課題
項目別の最頻年代を並べると、課題が年代の順に移っていく流れが見えます。40代前半は朝食欠食、40代後半は男性の喫煙、50代前半は体重増加、50代後半は睡眠です。
40代後半は男性の喫煙率が最も高く、50代前半で体重増加が最も多くなります。50代後半は睡眠で休養がとれない人が男女とも最も多く、女性は44.3%に達します。女性の50代は更年期と重なる時期で、睡眠の相談窓口は女性の健康支援とあわせて設けると利用されやすいと考えられます。
男女の違いも施策の対象を決める材料になります。喫煙・飲酒・体重増加は男性に多く、間食と睡眠の休養不足は女性に多い項目です。同じ「食生活の改善」でも、男性には朝食、女性には間食というように、対象年代と性別で内容を変えると、施策の対象者を絞り込めます。
自社の課題を見つける手順
全国値は物差しにすぎません。施策を立てるには、自社の従業員の問診データと比べる作業が先です。
自社の問診データの入手
健保組合に加入している企業は、保険者が作成するスコアリングレポートや健康課題の分析資料に、特定健診の問診結果が載っています。協会けんぽに加入している中小企業は、事業所カルテ(ヘルスケア通信簿)で同じ項目を確認できます。どちらも、健診データを保険者に提供していることが前提です。大規模法人部門では、保険者から依頼を受けた場合に40歳未満の従業員の健診データを提供すること、中小規模法人部門では、保険者の求めに応じて40歳以上の従業員の健診データを提供すること(同意書等の提出を含む)が、認定の必須要件です。
全国値との比較と優先順位づけ
健保連の年代別・性別の値と自社の値を項目ごとに並べ、全国値より高い項目と、該当者の人数が多い年代を優先します。たとえば40代男性の朝食欠食が全国値の32.2%を上回っていれば、そこが最初の対象です。
数値目標・実施主体・達成期限の設定
健康経営優良法人の認定では、大規模・中小のどちらの部門でも、具体的な推進計画を策定し、数値目標と実施主体と達成期限を定めて推進していることが必須要件です。「朝食欠食者率を2年で5ポイント下げる」のように、問診の項目をそのまま目標に使うと、計画と効果検証が同じ指標でつながります。
生活習慣の改善度による効果検証
大規模法人部門では、施策の参加率や満足度を把握するだけで、睡眠時間・食生活・運動習慣・喫煙率といった生活習慣や意識の改善状況を検証していない場合、認定されません。中小規模法人部門でも、取り組みの結果を確認し、改善につなげていることが必須です。健保連調査と同じ定義の指標で年度ごとに比べれば、改善度がそのまま検証結果になります。
年代・テーマ別の施策と認定との関係
健康経営優良法人の認定要件には、すべて満たす必要がある「必須要件」と、複数の中から一定数を満たす「選択項目」があります。このほか、認定要件には含まれない設問もあります。
40代前半の朝食欠食には、社員食堂等での朝食の提供、健康に配慮した食事を提供する環境整備、管理栄養士による相談窓口が対応します。食生活の改善は大規模・中小の両部門で選択項目です。大規模法人部門では、「従業員参加型」か「環境整備型」のどちらかで認定基準を満たす取り組みが必要です。参加型はアプリやカロリー記録、定期的な企画、管理栄養士の個別指導、環境整備型は食事環境の整備や相談窓口、朝食提供が該当します。研修や情報提供だけでは適合しません。
40代後半の男性の喫煙には、禁煙外来の治療費補助、禁煙補助剤の支給、就業時間中の喫煙に関するルール、非喫煙者への継続的なインセンティブが対応します。喫煙率の低下に向けた取り組みは両部門で選択項目です。あわせて確認したいのが受動喫煙対策で、こちらは両部門で必須要件です。屋内・屋外の禁煙状況が適合要件に満たない事業場が1つでもあると認定されません。
50代前半の体重増加には、定期的・継続的な運動企画、体力測定などの運動機能のチェック、特定保健指導の受診勧奨が対応します。運動機会の増進は両部門で選択項目です。大規模法人部門で保健指導の選択項目に適合するには、特定保健指導の実施率を上げる取り組み、実施率の把握、労働安全衛生法に基づく保健指導の3つに加え、保健指導の実施割合の把握が必要です。中小規模法人部門は、特定保健指導の実施を促す取り組みか、産業医・保健師・地域産業保健センターによる保健指導のどちらかを行っていれば適合します。
50代後半の睡眠には、睡眠時無呼吸症候群のスクリーニング検査、産業医や保健師による睡眠に関する指導、仮眠制度、執務室の照明の工夫、睡眠改善のアプリやウェアラブルデバイスの配布が対応します。睡眠の質向上に向けた取り組みは、令和8年度の健康経営度調査で大規模法人部門に独立した設問として新設されました。認定の要件には入っていません。中小規模法人部門の申請書にも睡眠の設問はありますが、認定要件には含まれません。睡眠は長時間労働と関係が深いため、労働時間の管理と合わせて進める必要があります。
保健指導については、40歳以上は保険者の特定保健指導、40歳未満は事業者の保健指導という分け方をやめ、健診後の面談として一体で運用する方法があります。中小規模法人部門の申請書には「特定保健指導と労働安全衛生法の事後措置とを一体的に実施している」という選択肢が用意されています。産業保健スタッフが両方を担えば、対象者の抜けと二重の案内を減らせます。
健診結果の指標として調査に記入する項目
大規模法人部門の健康経営度調査には、施策とは別に、健診結果の指標を記入する設問があります。原則40歳以上の従業員について、適正体重維持者率(BMI18.5以上25未満)、喫煙率、運動習慣者比率(週2回・1回30分以上)、睡眠により十分な休養がとれている人の割合、朝食欠食者率、飲酒リスク者率、血圧リスク者率、血糖リスク者率、糖尿病管理不良者率を、2025年度と2022年度の値で記入します。
このうち喫煙率・睡眠・朝食欠食・飲酒は、特定健診の標準的な質問票の項目と定義を揃えてあります。健保連調査の年代別の値は、自社が調査に記入する指標の全国値としてそのまま使えます。3年前との比較を求められる設問のため、指標を毎年同じ定義で残しておくことが、翌年以降の回答の手間を減らします。
中小規模法人部門にはこの設問はありませんが、上位認定のブライト500の評価では、従業員の生活習慣の改善度合いを評価しているかが問われ、記載例として朝食欠食率が挙げられています。
10月から始める1年の進め方
健康経営度調査の回答期間は、大規模法人部門が10月9日、中小規模法人部門が10月16日に終わります。回答を終えた直後は、今年の回答で適合できなかった項目と、記入できなかった指標がはっきりしている時期です。ここから来年度の施策を組み立てると、1年後の回答に間に合います。
回答後の秋に、保険者のスコアリングレポートや事業所カルテで自社の問診結果を確認し、健保連調査の年代別の値と比べて課題を絞り込みます。年内に対象年代とテーマを決め、数値目標・実施主体・達成期限を推進計画に書きます。年度初めから施策を始め、健診の時期に合わせて特定保健指導や事業者の保健指導の対象者を拾い、翌年の健診結果で改善度を確かめます。この流れを回すと、計画の策定、施策の実施、効果検証の3つが同じ指標でつながり、来年8月からの回答にそのまま使えます。
データを使う上での留意点
健保連の値は健保組合の加入者のものです。協会けんぽに加入する中小企業は、加入者の構成が異なるため、協会けんぽの事業所カルテや都道府県別の値と比べるのが適切です。
問診は本人の回答であり、測定値ではありません。「運動習慣がある」と答えても運動量は分かりませんし、体重増加は健診のBMIで確かめられます。問診と測定値を合わせて見ることで、施策の対象者を絞り込めます。
問診の回答は個人の健康情報です。事業所単位の集計値を施策に使う分には問題ありませんが、個人の回答を人事評価に使ったり、不利益な取扱いの根拠にしたりすることはできません。健康情報の取扱規程に沿って、集計単位と利用目的を決めてから使います。
出典
健康保険組合連合会「令和6年度 特定健診の『問診回答』に関する調査」(2026年9月3日公開、2026年9月25日取得)
ACTION!健康経営「令和8年度健康経営度調査票(サンプル)」「健康経営優良法人2027(大規模法人部門)認定要件」(2026年8月17日公表、2026年9月25日取得)
ACTION!健康経営「健康経営優良法人2027(中小規模法人部門)認定申請書(サンプル)」「同 認定要件」(2026年8月17日公表、2026年9月25日取得)
執筆・監修
WellaboSWP編集チーム
「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。
