SPQ(東大1項目版)とは|設問・計算方法などを解説
SPQ(東大1項目版)とは
SPQは、1項目の設問でプレゼンティーズム(プレゼンティーイズムとも表記)を測定する尺度です。正式名称はSingle-Item Presenteeism Questionで、平成27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「東京大学ワーキング」(経済産業省の委託事業)で開発されたことから、東大1項目版と呼ばれています。設問文や使用条件は、東京大学未来ビジョン研究センター データヘルス研究ユニットが運営する公式サイト(以下、SPQサイト)で公開されています。
経済産業省の健康経営度調査では、令和3年度調査からプレゼンティーズムなどの測定状況を尋ねる設問が加わりました。令和7年度の調査票でも、プレゼンティーズムの測定尺度を尋ねる設問の選択肢に、WHO-HPQやWLQなどと並んでSPQが挙げられています。
設問とスコアの計算方法
SPQの設問は次の1問です。文言を変えると別の尺度になってしまうため、原文のまま使用します。
「病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%として過去4週間の自身の仕事を評価してください。」(回答:1〜100%)
プレゼンティーズムは「100%−回答値」で計算します。70%と回答した従業員のプレゼンティーズム(損失割合)は30%と推計されます。基準は他人との比較ではなく、病気やけががないときの自分の仕事の出来です。健康時の自分と比べてどれだけ発揮できているかを答えてもらう設計になっています。
Excelでの集計手順
集計に専用ツールは要りません。
- 回答列の隣に「損失率=100−回答値」の列を作る
- 空欄や範囲外の値(1%未満・100%超)を集計から除外する
- 部署別・全社で損失率を単純平均する
この平均値が集団のプレゼンティーズムです。個人ごとの値の解釈には限界があるため(後述)、集計は集団単位を基本とします。
参考値との比較
SPQサイトには、アクサ生命の健康習慣アンケート(2024年1月〜2025年8月実施、9,184社・延べ439,870人)に基づく参考値が公開されています。従業員単位の平均は22.5%(標準偏差18.2)、企業単位の平均は21.7%(標準偏差6.0)です。両者は分母が異なる別の指標のため、自社の値と比べる際はどちらの単位かの確認が必要です。参考値の母集団は特定のアンケートの回答企業であり、日本の全企業を代表する値ではない点にも留意が要ります。
使用条件と実施のしかた
SPQサイトは使用条件を次のように記載しています。
「SPQはライセンスフリーです。著作権者は、第三者の自由な再利用を承諾しており、研究目的および商用目的に無料で使用いただける調査票です。」
許諾申請や利用料は不要です。健康経営度調査の調査票には、測定尺度の選択肢の中に開発者の許可や使用料が必要なものがあるとの注記があり、この点を気にせず使えることはSPQの利点です。出典表記を義務づける記載はありませんが、社内資料や報告書に載せる際は出典を明記しておくと、数値の根拠を説明しやすくなります。
無記名で行うか、記名で行うか
- 無記名で実施する場合:従業員満足度調査など既存の社内アンケートに1問追加する方法です。回答への心理的な抵抗が小さく、率直な回答を得やすい形式と考えられます。個人を特定できないため、結果は集団の把握と経年比較に使います。
- 記名式で実施する場合:ストレスチェックと同時に実施する場合はこちらです。ストレスチェックは受検者を特定して行う制度のため、無記名にはできません。SPQの回答を誰が閲覧できるか(実施事務従事者の範囲にとどめるか、人事担当者も見るのか)を事前に決めて、従業員に周知したうえで実施します。
経年比較を目的にするなら、同じ時期・同じ調査で年1回続ける設計が扱いやすいと考えられます。健康経営度調査では、SPQで測定している場合に実績値(1〜100%の整数)を記入する欄が用意されており、「100%−回答値」をプレゼンティーズムの実績値として回答する形式です。この設問は評価には使用されないと調査票に明記されています。設問の構成は年度で変わるため、記載のしかたの詳細は当年度の調査票が公開され次第、別の記事で扱う予定です。
SPQの検証と限界
SPQは、中小企業24社の従業員1,021名を対象とした研究で、測定尺度の国際的な評価基準(COSMIN)に基づき構成概念妥当性と反応性が確認されています(Muramatsu et al. 2021)。アブセンティーズム、主観的な健康リスク、ワークエンゲージメントなど、プレゼンティーズムと関連することが知られている要因との関係が検証されました。
そのうえで、次の限界があります。
- 設問が1問のため、個人単位の値は測定誤差の影響を受けやすく、個人の評価や処遇の指標には向きません。集団単位の把握が基本です
- 自己申告のため、回答者の主観による偏りを含みます。偏りの傾向が安定していれば、経年の差分(改善・悪化)の解釈は可能と考えられます
- どの不調が損失の原因かは分かりません。原因の特定には別の質問や調査の追加が必要です
WHO-HPQ・QQメソッドとの使い分け
プレゼンティーズムの主な測定尺度には、SPQのほかにWHO-HPQとQQメソッドがあります。3つは評価の基準が異なります。
- SPQ(東大1項目版):設問数1問。病気やけがのないときの自分の仕事の出来と比較して回答します。損失割合×人件費で金額を概算できます。妥当性はCOSMIN基準の検証(Muramatsu et al. 2021)と国内大規模の参考値に裏づけがあります。
- WHO-HPQ:複数問で構成され、自身の仕事ぶりの評価と他者との比較の両方を尋ねます。絶対的・相対的プレゼンティーズムを算出でき、国際的に多数の検証があります。
- QQメソッド:不調ごとに、不調がある日の仕事の量と質を尋ねます。量×質の損失を不調別に算出でき、原典(Brouwerら)と国内での使用実績があります。
このほかWFun・WLQ・WPAIといった尺度もあります。健康経営度調査での測定・開示が目的であれば、SPQ単独で対応できます。不調別の内訳を把握して施策の優先順位まで検討したい場合に、QQメソッドなどの追加が選択肢になります。
測定結果を施策につなげるには
SPQで分かるのは「集団としてどれだけ損失があるか」までです。数値を改善につなげるには、どの不調が損失に効いているかの分解と、施策への接続が求められます。
弊社ではSPQで全体の損失を把握したうえで、QQメソッドを実務負荷に合わせて簡略化した独自の運用(QQメソッド1回法)を組み合わせています。これは学術的に標準化された手法ではなく、検証済みの尺度を組み合わせた実務上の工夫です。組み合わせの考え方は理論編の記事で、測定結果を施策と開示につなげる流れはデータ活用の記事で扱っています。
よくある質問
Q1: SPQは何問ですか。
A: 1問です。回答は1〜100%の数値を記入するだけです。
Q2: 費用はかかりますか。
A: かかりません。ライセンスフリーで、商用目的を含め無料で使えます。
Q3: ストレスチェックと同時に実施できますか。
A: できますが、記名式になります。ストレスチェックは受検者を特定して行う制度のため、同時に実施する場合は無記名にできません。回答の閲覧範囲を事前に決めて周知したうえで実施します。
Q4: 健康経営度調査ではどう扱われていますか。
A: 令和3年度調査から測定状況を尋ねる設問が加わり、令和7年度の調査票でもSPQは測定尺度の選択肢の一つです。SPQで測定した実績値は「100%−回答値」で記入します。設問の構成は年度により変わるため、回答の際は当年度の調査票の確認が必要です。
出典
- 東京大学未来ビジョン研究センター データヘルス研究ユニット「SPQ(東大1項目版)」(2026年7月2日閲覧)
- 経済産業省 第6回健康投資ワーキンググループ 事務局説明資料(令和4年7月26日)
- 令和7年度健康経営度調査 調査票サンプル(大規模法人部門)
- Muramatsu K, Nakao K, Ide H, Furui Y. Testing the Construct Validity and Responsiveness of the Single-Item Presenteeism Question. J Occup Environ Med. 2021;63(4):e187-e196. doi:10.1097/JOM.0000000000002158
執筆・監修
WellaboSWP編集チーム
「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。
