令和7年労働災害発生状況|死亡は過去最少も「転倒」は最多 企業の安全衛生対策を考える
厚生労働省は2026年5月27日、令和7年(2025年)の労働災害発生状況の確定値を公表しました。死亡災害は700人と過去最少を更新した一方、休業4日以上の死傷災害では「転倒」が37,195人で最多となり、前年より2.2%増加しています。死亡災害の改善傾向と、職場で実際に発生しやすい休業災害の傾向には乖離があり、企業の安全衛生対策にも見直しの観点が必要となっています。
本記事では、厚生労働省が公表した確定値の要点を整理し、人事・総務・衛生管理者の方々が安全衛生委員会や年度計画の見直しに活用できる視点をまとめます。
令和7年の労働災害発生状況
厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」によると、令和7年(2025年1〜12月)の労働災害は次の数値となりました。
令和7年の死亡災害は700人で、前年と比較して46人減少しました(前年比6.2%減)。これは統計上の過去最少を更新する数値です。業種別では建設業214人(前年比7.8%減)、製造業115人(同19.0%減)、陸上貨物運送事業80人(同25.9%減)が大幅な減少となっています。一方、商業は61人(同10.9%増)と増加に転じました。事故の型別では、墜落・転落186人、交通事故(道路)126人、はさまれ・巻き込まれ117人が上位となっています。
休業4日以上の死傷災害は135,333人で、前年と比較して385人の減少にとどまりました(前年比0.3%減)。死亡災害の減少幅と比較すると、休業を伴う災害は改善が進んでいない状況と整理できます。業種別では製造業26,371人(前年比1.1%減)と陸上貨物運送事業15,632人(同4.1%減)が減少した一方、商業23,128人(同4.9%増)、保健衛生業19,291人(同2.2%増)と第三次産業で増加が続いています。
事故の型別の動向
死傷災害の事故の型別で最多となったのは「転倒」で37,195人となりました。前年と比較して817人増加し、増加率は2.2%です。続く「動作の反動・無理な動作(腰痛等)」が22,166人、「墜落・転落」が20,864人と続きます。
転倒は労働者が平地や階段でつまずく・滑る・踏み外す等によって発生する災害で、休業日数が長期化しやすい類型と考えられます。建設・製造業の墜落・転落のような大型機械や高所作業に起因する災害とは異なり、業種を問わず職場のあらゆる場面で発生し得る点が特徴です。
転倒災害が長年にわたり死傷災害の最多類型となっていることから、企業の安全衛生対策においては従来の墜落・はさまれ対策に加え、転倒予防の観点を年度計画に組み込む整理が必要となっています。
業種別の動向
死傷災害の業種別動向で目を引くのは、商業(小売業を中心とする業種)と保健衛生業で災害が増加している点です。
商業は死傷災害が23,128人(前年比4.9%増)、死亡災害は61人(同10.9%増)と、いずれも増加に転じています。保健衛生業は死傷災害が19,291人(同2.2%増)で、医療・介護現場での腰痛や転倒等の災害が含まれます。
製造業や建設業のように専用の安全衛生管理体制が整いやすい業種と比較すると、小売・医療・介護は店舗や事業所が分散し、安全衛生管理が現場任せになりやすい構造があると考えられます。第三次産業を主体とする企業では、事業所単位での安全衛生体制の再点検が課題となります。
高年齢労働者の転倒リスク
転倒災害の増加は、高年齢労働者の就業比率上昇とも関連すると考えられます。労働安全衛生総合研究所の分析では、60歳以上の女性労働者の「転倒による骨折等」の発生率は20代と比較して19倍に達するとの結果が示されています(労働安全衛生総合研究所 公表データ)。
厚生労働省は「エイジフレンドリーガイドライン」(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)を公表しており、高年齢労働者を対象とする転倒予防として、職場環境の改善、身体機能の維持・向上のための取組、健康診断結果の活用などを示しています。
人事・衛生管理者の立場からは、健康診断における運動機能関連項目の結果と、各部署の業務内容(立ち作業の比率、移動距離、階段使用頻度等)を組み合わせて、転倒リスクの高い従業員・配置を把握する取り組みが想定されます。
第14次労働災害防止計画と令和8年度の重点施策
厚生労働省は第14次労働災害防止計画(令和5年度〜令和9年度)において、業種別の数値目標を設定しています。令和9年までに令和4年比で、建設業・林業の死亡災害を15%以上減少、製造業のはさまれ・巻き込まれ死傷者数を5%以上減少、陸上貨物運送事業の死傷者数を5%以上減少させることを目標としています。
令和8年度の重点施策として、作業行動に起因する災害対策、高年齢労働者への対応、外国人労働者の防止対策、業種別対策(建設業・製造業・林業等)、健康確保対策、化学物質対策が示されました。
6月は全国安全週間の準備月間
毎年7月1日から7日は「全国安全週間」とされており、6月1日から30日はその準備月間に位置付けられています。事業者は準備月間中に職場の安全総点検、安全衛生委員会での重点議題設定、現場巡視、安全教育の実施計画策定等に取り組むことが想定されます。
令和7年の労働災害発生状況の確定値を踏まえると、今年の安全衛生委員会で取り上げたい視点として、自社業種における事故の型別の傾向把握と対策の見直し、転倒災害の発生リスクが高い場所・作業の現場点検(床面の段差、滑りやすい箇所、照明、通路の障害物等)、高年齢労働者の配置・作業内容と健康診断結果の組み合わせ確認、過去の自社災害の傾向と新たに浮上した類型との比較、安全衛生教育の対象と内容の見直しが想定されます。
まとめにかえて
令和7年の労働災害発生状況は、死亡災害が過去最少を更新した一方、休業4日以上の死傷災害は横ばいで「転倒」が最多かつ増加するという二面構造を示しました。死亡災害の減少傾向は中長期の安全対策の蓄積によるものと考えられますが、職場で実際に従業員が休業に至る災害は依然として多く発生しており、企業が引き続き取り組むべき領域は残っていると整理できます。
6月の全国安全週間準備月間は、年度計画の中間見直しと現場点検を行う時機にあたります。確定値で示された傾向を社内の安全衛生委員会で共有し、自社の業種・年齢構成・現場特性に即した対策に落とし込む取り組みが求められます。
WellaboSWPでは、健康診断結果や産業医面談記録の一元管理を通じて、安全衛生委員会の議題整理や高年齢労働者の健康リスクの可視化を支援しています。安全衛生体制の見直しを検討されている企業の方は、お気軽にお問い合わせください。
出典
厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)を公表」(2026年5月27日)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73382.html
厚生労働省「職場のあんぜんサイト 労働災害統計」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/anst00.html
厚生労働省「第14次労働災害防止計画」(令和5年度〜令和9年度)
厚生労働省「エイジフレンドリーガイドライン」
労働安全衛生総合研究所 公表データ
執筆・監修
WellaboSWP編集チーム
「機能する産業保健の提供」をコンセプトとして、健康管理、健康経営を一気通貫して支えてきたメディヴァ保健事業部産業保健チームの経験やノウハウをご紹介している。WellaboSWP編集チームは、主にコンサルタントと産業医・保健師などの専門職で構成されている。株式会社メディヴァの健康経営推進チームに参画している者も所属している。
